そして「目的と情熱」です。
今回のミッションの目的は、小惑星探査機を使って4年間で往復60億キロもの太陽系惑星間の単独航行を行い、イトカワに着陸してその惑星の砂や岩石を採集し地球に戻ってくるサンプルリターンの計画です。このサンプルリターンは宇宙開発の最先端の技術と資金力を持つNASAでさへ成功の確率が低すぎるからこのサンプルリターンは行っていないものでした。世界の学会での一般的な評価は「そんな技術」を日本が持っているのか?という事だと思います。しかしJAXAのディレクターの川口淳一郎教授はこれに挑戦する決断をしたのです。
教授の言葉を紹介します。
130億年前 ビッグバンが起きた。
そして今がある。
しかし我々人類はなぜ今ここにいるのか知らない。
我々はどこから来たのだろう。
それを知ることは「人間の生きる意味」だから
それを知ることに挑戦する。
挑戦には成功も失敗もない。
そこにあるのは
「知りたいという情熱」 PASSION
冒険心 夢 希望 である。
川口淳一郎
なんてロマンティックな表現でしょうか?人間の生きる意味を知るために挑戦するんだ、そこには「知りたいという情熱」だけなんだとおっしゃっています。理数系の教授の表現とは思えない文学的な表現の魅力を感じます。この教授の「情熱」に仲間が集まってきました。そして世界初の挑戦ですから既存の技術では間に合わなくて新たに開発しなければいけない技術が沢山ありました。過去の機能の改善程度では全く対応する事が出来ません。
ここに多くのINNOVATIONが生まれています。
情熱はひらめきとINNOVATIONの母なのです。
STEVE JOBSのこの言葉を思い出しませんか?
「THINK DIFFERENT」
「海軍に入るぐらいだったら海賊のほうがましだ」
またVIRGINのRICHARDSONの
「大企業が右というなら僕らは左を選ぶ」
この挑戦への情熱が最も重要な事なのです。
そしてINNOVATIONの入り口なのです。
日本の企業に大きく欠けているところがここです。
日本は殆どの企業は分析至上主義で新企画を進めようとする。
なぜ?
経営陣に認可されないから?
稟議書が通らないから?
古い企業体質からは決してINNOVATIONは生まれることが無く企業のエネルギーが「収縮」していくだけです。
ではこの情熱が生みだしたINNOVATIONを見て行きましょう。
① イオンエンジン⇒最小限の燃料で最大効果のエンジンのINNOVATIONです。トラブルの連続でしたが4年の予定が7年になっても作動し続けたイオンエンジンです。
② ターゲットマーカー⇒イトカワは遠すぎて電波での指示が届くのに20分かかります。はやぶさは自分で自立判断して惑星に着陸して離陸しないといけないのです。そのためにターゲットマーカーを惑星に投下して距離感を自分自身で計り着陸と離陸を行ったのです。
③ サンプラ―ホーン⇒惑星の砂や岩を採集する装置です。はやぶさがタッチダウンした瞬間に筒状の装置を地面に付けて、筒状の中からパチンコ玉みたいなものを発射させて地面を粉砕して砂や岩石を採集する装置です。
④ ミネルバ⇒探査ロボットです。これははやぶさが一定の場所しか調査できないのに対してはやぶさから投下されると惑星の引力を利用してにその惑星の上を移動して画像を送る使命を持っていました。
ミネルバはローマ神話の女神(曖昧さと回遊)からネーミングされています。
ミネルバは失敗でした。イトカワに投下されましたがそのまま跳ねてイトカワから離れてしまったのです。開発担当者は自分の娘のように作り上げていますから彼にとっては単なる探査ロボットではなくミネルバちゃんなのです。「彼女は暗くて寒い宇宙空間で今でもその役目を果たす為に自分で何をすべきか考えているのです」と語っていた言葉がとても印象的です。
こんな新しい開発が「創造」されたのです。この技術は地球上で新たな活用方法が考えだされることでしょう。新しい産業が誕生するかもしれません。
「原発の停止」も全く同じだと思います。最終的な放射能の処理さへ決まっていないエネルギーをどうやって使うというのでしょうか?地中や宇宙に廃棄するのでしょうか?そんな事が出来るのでしょうか?下水施設のないマンションと同じことではありませんか?僕は「原発は停止」すべきだと思います。それによって新しいINNOVATIONや新たな電気エネルギーが誕生するきっかけになるからです。何かを捨てなければ、新しい物は生まれてきません。その必要とされている新しい物を創造する時に「情熱」も誕生するのです。
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