誇り高きケア―ンテリアの戦い

無鉄砲という言葉がある。

よく考えもせずに猪突猛進するような奴だ。

荒野の無鉄砲野郎なんてありそうな題名だ。

ハチは間違いなく無鉄砲ケア-ンテリアだ。

ハチは自分より大きな犬に出会うと無鉄砲ケア-ンテリアに変身する。

どんなに自分より大きくても必ず挑んでいくのだ。

「俺様がNO1」を実践するのだ。

今日の相手は自分より何倍も大きなオーストラリアシェパードのモモだ。

この幼なじみのモモとは永遠のライバルと言っていいだろう。

戦いの場所は海の公園の芝生の上。

散歩のモモを発見するとすぐさま臨戦態勢に入る。

他の犬友もその動向を興味深く見ている。

そう　ハチは身をかがめてタイミングを計っている。

「今だ！」

甲高い声でギャオギャオギャオギャオギャオと雄叫びをあげながら自分より何倍も大きなモモに挑んで行く勇敢なケア-ンテリアだ。

相手は自分の足元ぐらいの大きさのテリアの奇襲攻撃にビックリした顔で後ずさりした。

ハチは大いなる勇気をもって顎下目がけて飛びかかる。

誇らしげな勇気の尻尾が凛と大空目がけいきり立つ。

ハチは自分の5倍はある相手に勝つには初回の攻撃しかないと決め込んでいるようだ。

甲高い声でギャオギャオギャオギャオと相手を追いやる。

よしいいぞ！　その調子でやっつけろ。

む相手の反撃が始まった。

お前みたいなチビスケなんて抑え込んでやる。

とモモは長く大きな前足攻撃でハチを押さえつけ始めた。

ハチは短かい手を必死に伸ばして、大きく長い前足攻撃に抵抗する。

相変わらず甲高い声を出して勇気を引き出している。

しかし、あまりの体重差に劣勢に追いやられてついに押さえつけたれた。

ハチは仰向けになってそれでも白い犬歯をむき出して必死に威嚇している。

ガウガウガウガウ　

まるで悪魔の子のような形相である。

ガウガウアガガガガガガガ

おいハチ大丈夫か

手伝おうか？

僕は駆け出しそうになる。

ハチはそんな状況でもけっして弱音をはかない。

普通のワンコだったら、キャインとキャインと降伏するところだ。

ここでハチの中に故郷のスコットランドでオオカミと戦ったケア-ンテリアの熱い血が強烈に甦るのだ。

ハチは隙をみて反転しそいつの押さえ込みから横に素速く逃げ切った。

ハチは休むこと無く、甲高い声でギャオギャオギャオギャオと連続あご下攻撃を仕掛けた。

モモは悪魔の子のようなハチの形相にタジタジになり引き下がる。

今だハチの大きなジャンプ一番！

顎下のモモの白く長いフサフサ毛に噛み付いた。

サクリそんな音がした気がする。

飛び降りたハチの口にモモの白い長い毛がカタマリで咥えられていた。

ハチはその毛を誇らしげに加えて、攻撃を終了し尻尾を空に突き上げて戻って来た。

僕は抱きあげて抱きしめる。

モモのヨダレがハチの顔についていた。

激闘の跡がハチの体中から感じる。

心臓は激しく打ち続け、呼吸は荒く小さな舌を精一杯出している。

僕は勇敢なハチを抱きしめる。

ハチ......

ハチ.......

僕のおでこをハチのおでこにつけて

ハチの瞳を覗いてみた。

誇らしげな輝く瞳があった。

僕やっつけたよ！とでも言うようなドヤ顔だ。

勇敢な僕のケアーンテリアのハチは

こんな奴だ。