ベッドで僕が寝ているとフローリングに足音をさせながらハチがやってくる。
軽やかにベッドに飛び乗ったかと思うと、背中にスリスリべったりと自分の背中を僕の背中に押しつけるのだ。それ事自体の行為は「よしよし甘えにきたな、可愛いやつ」なのだが、背中がちくりと「いたかゆい」のだ。そうハチの背中の毛は「たわし」のように固い。
そしてやがてハチは寝てしまうのだが、僕が少しでも動くと「ウー」と怒るのである。自分が好きでスリスリしにきたくせに、ご主人が動くと寝ていても「ウー」と怒るのである。
アツいうどんを頼んどいて、その汁を飲むとアツいと怒るようなものである。
身勝手この上ない。
「なんだよ、ハチが自分が好きで来たくせに」
僕はぶつぶついいながら、寝返りを出来ないままで窮屈な睡眠となるのだ。
「キャン キャン クーン クーン」
今度は真夜中にと泣き出した。
なんだよと思ってハチをみると横たわった足をばたばたさせながら
「キャン キャン クーン クーン」と泣いているのだ。
悪い夢を見ているようだ、しかし僕はふと思う。
あんなにわがままに「我」を通して、大きな犬にも戦って負けたことが無いハチ。
怖いものなんてないはずなのにいったい誰に追いかけられている夢を見ているのだろう?「キャンキャンキャン」激しくなった。
僕はハチを揺り起こし「悪夢」から助けてやると
三角の目を眠そうに開いた。
いったい何がハチを追いかけていたのだろう。
ハチは何を恐れていたのだろう。
ハチの夢を一度で良いから覗いてみたかった。
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