サザエさんはお魚くわえたドラネコを追いかける。
僕はサンマを丸ごと一匹くわえてベッドの下に逃げ込んだケアーンテリア猿のハチを追いかけるのだ。
夕食で今が旬のサンマを家族分4匹をオーブンで焼こうと、オーブンの蓋を開けて4匹並べ戸棚を開けて塩を取り出した。さあ塩を振りかけるぞとオーブンを見ると4匹あったサンマが3匹しかいない。えッ おかしい。サンマが逃げるわけないし・・・。
瞬間、黒い影がすっと視界から消えた気がした。
こんなことを平気でやるのはハチしかいない。
数々のいたずらが頭をよぎる。
「ハチー!お前サンマとっただろう」
僕は大急ぎでベッドの下をのぞく。いたいた、真っ黒い顔をしたあの新種のケアーンテリア猿のハチが大きなサンマを咥えてこちらを見ている。
「パパ ぼやっとしてちゃ駄目だよ。この獲物は頂いたよ。」
「ハチ、そいつは駄目だ! 生魚だぞ!おなか壊すし 美味しくないから戻すんだ。」
「パパ サンマは今が旬だよ、猫が言ってたよ。」
「いいからハチ戻しなさい」
僕はベッドをずらして手を伸ばしてハチをつかもうとする。ハチは当然ベッドの下の深い闇の中に逃げようとする。
「ハチ!待て!」
「いやだ!」
こうなったら奥の手だ。
僕は床を磨くモップの柄をもちだしてハチのお尻をベッドの下から押し出した。
「何するんだ!」
「うるさい、出てこい」
やっとの事で僕はハチの尻尾をつかむことに成功した。
ハチの尻尾を引っ張るとやっとサンマが疲れたような顔を出した。
ハチは自慢げに大きなサンマを咥えて笑って見せた。
その日は、夕食に僕のサンマだけが出てこなかった。
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