脱走犬ハチ 2

 

 

ハチがみあたらないのだ。

 

「ハチ!ハチ!」どこにもいない。

あのやろうまたしても脱走しやがって!!!!

早くいかないと白い紙で「迷子犬」とか書かれてしまう。そこからでは遅い、何としても先に見つけて確保しなければ・・・。

 

いつもの植木の周り 駐車場の隅 マンションの公園のブロックの陰   いない。

 

僕は少しどきッとした。

まさかマンションの敷地をでて前の交通量が多い16号線に出たのでは!

苦いモノが胸に押し上げてくる。

まさか まさか 事故なんて。道路に出て前のコンビニの駐車場を見てもいない。

僕は胸が苦しくなってくる、

まさか女の子のわんこを見つけて追いかけてついて行ったのでは・・・。

どうしよう!。

 

ハチがいないのだ。

 

ひょっとしてベッドの下で隠れていたのでは?一旦家に戻るがやはりいないのだ。

僕の心臓は痛みを感じ始めていた、どうしよう、どこにいるんだ?警察に届けないといけないのかな?心臓の痛みは続く。

 

敷地を再度捜索しているといつも挨拶する方がミニチュアダックスを連れて散歩していた。「こんにちは、うちのハチ見ませんでした?」

「見ましたよ、隣のトヨタ販売店の前を歩いてましたよ。」

えッやはり敷地を出たのか!!

僕は急いでその方向に向かった。

 

とその時、トヨタ販売店の方角から真っ黒な小さなワン子がスタスタと歩いてくるではないか。ハチである、僕は安堵しつつ走り寄って抱きかかえようとした。

 

ハチ 無事で良かった、心配したんだぞ。

と頬ずりをしようとした瞬間

「なんだ、この猛烈に臭いにおいは」

とても抱きしめることなんてできない匂いだ、多分「堆肥」かなんかの上で体をこすりつけてきたのだろう、その堆肥の色でいつもより黒く感じたのだ。

 

僕は体から離して息をしないように抱きかかえて、ハチを回収し人目を避けて階段を上がりシャワー室にハチを連れ込んだ。

 

「ぱぱ 面白かったよ、僕は一人でトヨタの先に行ったんだよ」

「どう僕臭いでしょう」

一生懸命に尻尾を振っている。

 

僕は無言でひたすらハチを洗い続けた。

 

玄関に網戸付きのドアを購入した。