売れ残りだったんだ。
ハチベイは。
ペットショップの表のガラスケースの中のわん子にはどうも興味が持てずに、なにかピンとくるようなオーラを発しているわん子には出会えずにいた。
「ほかにいませんか?」
訪ねてみると店員さんが裏から段ボールを持ってきた。
どうも表のガラスケースに入れても売れそうにないワン子は裏の段ボールに入れているようだ。中をのぞいてみるとウリボウみたいな子犬が必死に飛びあがっているではないか。
なんだこの一時もじっとしてない犬は。
とにかく連続して飛びあがっては
「俺にしろ!」「俺は凄いぞ!」「俺は強いぞ!」「俺に決めろ!」
そんな風に伝えているように感じた。
全くじっとしている事を知らないそのエネルギーに僕ら家族はビックリした。
小さいのにこんなにパワーが溢れているワン子は他にはいなかった。
こいつは、最も日本中で人気がある一般的なミニチュアなんとかというワン子とは根性とエネルギーが違うなと僕は感じた。
抱きあげるとどうだ、今度は一変してつぶらな瞳でうるうると僕らを見つめて
「やっと合えたね」みたいなオーラを出しはじめるではないか。
この「強さ」と「可愛さ」の両極端をもち合わせたウリボウのようなワンコがハチベイだった。僕ら家族は、少なくとも僕は「天使」にでも出会った気がしていた。
これが売れ残りのハチベイと僕との運命の出会いだった。
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