個性の力

 

 

 

新名所COREDO日本橋を歩いているとある記憶が蘇った。

僕がGIVENCHY JAPONの営業だったときの話である。日本橋三越

にブティックを構えておりGIVENCHY SHOPの中でも最も売上げ

 

が大きい店舗であった。その店の店長のSさんの記憶が蘇ったので

ある。

売り場担当者から「ニットを購入したがほつれていた」とクレーム

発生の連絡があった。お客様はお店のランクが高い方でもちろん

GIVENCHYの最上位の顧客である。Sさんと売り場担当者と僕と対

策を話し合ったのだが、Sさんはケロッとして動じない。売り場担

当者はヤキモキして心配で仕方ない様子である。数日後、お客様が

商品をもって来店された、僕も担当者も横で控えて待っていた。

お客様がいらっしゃった瞬間にSさんは「こんにちは!お久しぶりですね!」といつもの明るい声で接客すると、お客様は満面の笑顔で「まあSさん こんにちは お元気?」と親しい会話が始まった。

結局なんと、ニットの修理はもとより、新コレクションのジャケッ

トまで買って頂き喜んで帰っていかれた。

担当者と僕は唖然としてその光景を見ているだけであった。

素晴らしい日頃のコミュニケーションと信頼関係の賜物である。

 

 

ある日、全国店長会議を開催した。

それぞれ店の方針や店長の方針を発表してもらう。殆どが店長らし

い一般的な内容なのだがSさんは違った。全員の前で方針は一言「美白」ですと発表した。なぜならば、お客様と接客する上において一

番必要なのは自分が自信をもって接客する事だから、それには自分

が美しくなければいけない。それでこそ商品をお客様にお薦めでき

るという内容だった。

最初は何を言い出すのか思ったが「理」にかなっているのだ。

彼女の個性的な価値軸は一般的な「解答」にはなっていないのかも

しれないが、お客様にとっては最も望ましく正しい「解答」なのだ。

今の成熟時代は彼女のような「個性的な価値軸」に気づく事が閃きの入り口ではないだろうか。

そんな思いが日本橋で蘇った。

Sさんは今何をしているのだろうか?

 

何か新しいモノ 世界を変えるモノをつくるには、

みんなが捕われている制約の外側で考えなければ

いけない。

みんながそんなもんだと思っている人工的な限界の

外側で考えなきゃいけない。

STEVE WOZANICK