桂歌丸師匠の結晶性知性



情景が目に浮かんでくる高座「ねずみ」  
https://www.youtube.com/watch?v=COaL0GgFUo4  


鎌倉芸術館で歌丸師匠の高座をライブで聞いた。席は3階席の最上段だったので師匠の顔の表情はほとんど伺えないがその「話術」の魔法にかかった1時間だった。高座には一人では上がることができないので車椅子とお弟子さんの力添えでやっと高座に上がれる。長い話はできないのだろうと思っていたらトンデモナイ! 一度も噛む事なく明快な言葉と大きな声が会場に響いた。観客は話術に引き込まれて話の内容に集中してその情景を追い続けていた。 




SNSの限界と古典の多様な創造力 

商品が最初に市場と接するFirst Contact は非常に重要である。 
First Impressionがその価値の70%を決めてしまう。歌丸師匠のブランディング計画は明確で、ご自身の健康 入院 お見舞い の経験を歌丸師匠の「落ち」の感性で表現された。そしてふとした瞬間から古典落語「ねずみ」が始まって観客は話を追いかけてその言葉が作る情景を追い求める。全ての観客がほぼ同じ情景をイメージしていると思う。これは凄い現象だ。言葉が大勢の人の脳に入ってそれぞれの情景を思い浮かべているのだ。  
SNSは「文字」が通用しなくなった。読まないのだ。BLOG  FB  CHAT  PINTEREST と文字から画像へと変化している。  
一方落語はその逆だ。発信するのは「言葉」でその言葉を聞いて人々は個別の  
イメージを描く事が出来る。イメージに限界はないのでそこから新しいイメージも生まれる。発信する人のスタイルが変われば受ける側の創造力も変化する。  


流動性知性と結晶性知性 

脳には二つの知性がある。一つは流動性知性、これは記憶や計算を司るところでピークは18歳だと言われている。つまり人間は等しく18歳から物覚えの退化が始まっているのだ。一方の結晶性知性は年齢を重ねれば重ねる程その細胞は増えていく。それは芸術や創造性を司る知性だ。「芸術家」と言われた人々が  
高齢で世に残す作品を残していくのはこの結晶性知性が活性化されているためだ。日々この脳の力を使わなければこれも退化してしまう。年齢が人を退化させるのではない。高齢だからと諦める気持ちが人の能力を退化させるのだ。  
感性は無限である。この活性化は感じて自分で創造していくことに尽きる。  
与えられた情報では結晶性知性の活性化は訪れない。