ベルナール・アルノー氏率いるLVMHグループ。
236億5900万ユーロ(約3兆円)の売り上げを誇る巨大なラグジュアリーブランドの帝国だ。
アルノー氏は北フランスの建設・不動産会社を運営していた人だ。
1982年、彼はNYに移住して得意分野の富裕層向けの別荘などの建築と分譲をおこなっていた。
1984年、クリスチャン・ディオールを所有する繊維会社ブサックを急に買収した。
ではなぜディオールを急に買収したのか?それはNYでのタクシー運転手との会話がきっかけであったという逸話がある。
彼は運転手に「フランスで想い浮かべるものってなにかある?」と聞くと「大統領の名前も知らないけど、クリスチャン・ディオールていうのは聞いたことがあるな」というこの会話で閃いたといわれている。
つまり彼からみれば、不動産もファッションも富裕層向きという視点でとらえれば同じ感覚を持つことが出来たのだろうか。
僕もLNMHグループのGIVENCHY JAPONで働いていたことがある。この時も何となく思ったものだ。なぜこのグループはあらゆる面でディオールを優遇するのだろうか?いまにしてみればきっかけを創ったブランドがディーオールであるから彼の政策も納得できる。
きっかけはここでもこの時期のディオールをはじめとするラグジュアリーブランドが高収益であったわけではない。一族経営が多いために大胆な政策が打てずに苦境のブランドが多かった。たとえばディオールをライセンスで日本市場広めていたのはカネボーというアパレルである。アルノーはこのライセンス契約を打ち切り直接店舗を開拓していく。同じく「靴下」などのライセンスビジネスも打ち切っていった。すべてはイメージが生命線であることを彼は知っていたからだ。そしてデザイナーを刷新していく。ファッションはデザイナーと一緒に老齢化する傾向がある。固定客を大切にすればする程、この傾向は顕著に表れる。新しいファッションを入れようとしても中々難しい。ここを彼はバッサリと変えてしまった。今までの顧客よりは新しい顧客の開拓を優先したのだ。ディオールの場合は新鋭のアレクサンダーマックイーンが登用された。既存の経営者で下せる判断ではない。デニムを大胆に使ったり刺繍をポップにいれたり蛍光色を入れたりするコレクションはおそらく従来の古い顧客は失ったかもしれないが新しい大きな市場を獲得する事に成功したのだ。
そしてももうひとつ優れた点がある。
ワンブランドワンカンパニーで運営している事だ。つまり決してLVMHの宣伝に投資をしたりはしない。個別のブランドがワンブランドワンカンパニーでその各ブランドに対しての投資をおこなっている点だ。
例えばトヨタを見てみると、トヨタのプリウス、トヨタのマークエックス、トヨタのクラウンという宣伝の仕方をとる。このTOYOTA の部分がLVMHになるわけだが決して、LVMHのDIORとは宣伝しないのである。
日本の企業が宣伝に劣る部分はここだと思う。企業の宣伝なのかブランドの宣伝なのかわからない。
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