エルミタージュ美術館で20匹の猫が働いている。猫を運営するための担当者もいるのだ。しかも猫の「医務室」まであり、お医者さんとスタッフが常駐している。まるで老人のケアセンターのような完璧なメンテナンスが行われているのだ。
では猫はどんな仕事をしているのか?
勿論、彼女や彼たちが得意な「鼠の駆除」なのである。
つまり美術品をかじる鼠を追いかけ回して追っ払うのだ。それは人類の文化を守るという高貴なミッションを彼女や彼たちしか出来ない方法で貢献しているのだ。
エルミタージュの猫たちは「捨て猫」である。人間に捨てられたにも関わらず、ただひたむきに人類の文化を守っているのだ。仕事内容を見てみよう。日向ぼっこをしたり寝転んだり眠ったり餌を食べたり・・・・いつ働いているのだろう?いやいやそこに存在すること自体が鼠にとっては脅威なのである。決してサボっているわけではないのだ。
エルミタージュ美術館があるサントペテルブルグ(旧レニングラード)はモスクワに次ぐ第2の都市で美しい文化の都である。失礼だがロシアらしからぬ自由な文化の香りがする都市である。
実は歴史の中でこの美しい都市を猫は2回にわたり救っているのだ。一度目は
第2次世界大戦のとき、ヒットラー率いるナチス軍がこの都市を攻めて3年間も包囲したときのことだ。3年目の冬は大寒波でマイナス50度、配給のパンは一日120グラム、電気は止まり水は湧水でしのいでいるような最中に多くの人が餓死で亡くなった。最初に人々を猫が助けたのはこの時期である。猫は自分自身の体を人間に与えたのである。すなわち「猫肉」と呼ばれるものが人々の手に渡り、なんとか人命を守ったのである。わが身を人間に捧げた気高い猫たちなのである。可愛そうな猫たちよ!
そしてナチス軍は敗れサントペテルブルグは解放された。猫が解放したのも当然なのだ。しかし人口の1/3を失った都市には腐敗した死体が溢れ処理される事もなく野ざらしにされていた。そこを襲ってきた輩が鼠なのだ。奴らは脅威の生命力とすざましい繁殖力でサントペテルブルグを奪い取ってしまったのだ。
2度めに猫が人々を救ったのはこの時だ。サントペテルブルグには猫は食べつくされていたので他の町から猫が鉄道に乗ってやってきた。一匹や2匹ではない。修学旅行で電車を貸切するような猫の団体が他の都市からやってきたのだ。猫はあっという間に鼠を駆除つまり食べつくしてしまったのだ。
鼠のサントペテルブルグは再び猫の手で人間に解放された。そして彼女や彼らは街の風景に溶け込んで自然な形で人間と猫の共存が始まったのだ。
サントペテルブルグの人々は猫が大好きだ。カレンダーには「猫の日」がありその日は、猫がドイツ軍から人々を身を犠牲にして守った事と、新たな支配者の鼠をあっと言う間にたたきのめし美しいサントペテルブルグを再び人間に解放した事を紙芝居や絵本で子供たちが物語で表現して猫をたたえるのだ。おー猫よ 猫よ どうして君たちはそこまでして人間を守ってくれたのかと。
街の建物の2階付近の壁のところどころに猫の銅像が備え付けられている。人々はその銅像にコインをぶつける、ぶつかると幸運が訪れると言われているからだ。こんな言葉が銅像には刻まれている「猫が平安である時代は平和な時代の証。人類は猫に感謝すべきだ」
この都市の人々を猫は今も守り続けている。
日向ぼっこをしたり寝転んだり眠ったり餌を食べたり・・・・
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