破壊王

5月の潮干狩りの喧噪も過ぎ、

海岸は夏に向かって日に日に海の色を青くかえていく。

 

この時期に多いのは小中学生の女の子の集団である。

きゃっきゃと黄色い声オレンジの声ピンクの声にぎやかで楽しそうなことこの上ない。

 

その少女たちは波打ち際に大きな「お城」を作っていた。

砂で作った大きなお城がこの子たちの一日の遊びの成果である。

最後にお城のてっぺんに松の木をおいて完成である。

皆なでうれしそうに出来上がったお城を取り囲んで大にぎわいである。

みんなで写真を撮ろうよ!

溌剌とした声が潮騒に響いている。

 

ハチである。

 

すたすたとその完成した城に駆け上ったのである。

てっぺんの松の木めがけてステルスシッコをまるでシャンパンを船が出来たときにかけるようにやってしまっているのである。

あまりの素早く予想できない行動に言葉を失って少女たちが見つめる中、ハチは後ろ足で城の頂上を破壊して何事もなかったように立ち去る。

あっという間の出来事で女の子たちがそれを認識してギャーとわめいたときには、ハチはもういないのである。

 

すたすたとその場を何事もなかったように次のターケットを探しているのである。

僕は「ゴメンネ!」と一言謝ってハチを追いかける。

 

ユダヤの城にでもかけたら大変なことになりかねないからな。

 

後ろで女の子たちがギャーからキャーキャーという笑い声に変わってこれまた楽しそうである。

 

ハチは聞こえているのだろうか?

 

しっぽが左右に揺れていた。